学習塾の「成果」は何か

学習塾の「なに」に期待して毎月月謝を払うのでしょうか。子どもに対してどのようなことを期待して、そこに通わせるのでしょうか。それを改めて考えてみたいのです。

塾に通えば問答無用で子どもの成績が上がるというのは盲信です。塾に通わせるということは、子どもにとって「学習できる環境」を与えたというだけです。そこで実際に学ぶのは子ども本人です。どのようなすぐれた講師、すぐれたカリキュラムのもとで学んでも、本人のやる気がなければ成績はずっと変わりません。高い月謝を払って良い塾に通わせても成績が変わらない場合、その時あなたは「子どもが怠けているから」と考えてしまうようなことはないでしょうか。「良い環境を与えたのだから、成績はおのずと伸びるはずだ」と、単純に考えていないでしょうか。同じ塾に通っている他の生徒の成績は伸びているのに、自分の子どもの成績は伸びないという場合、その事態を冷静に考えることができるでしょうか。

子どものせいにしてしまうのではないでしょうか。「あなたが怠けているからダメなんだ」と、叱ってしまうのではないでしょうか。それが、「間違い」なのです。塾の講師に相談しても、「本人のやる気がなければ伸びませんよ」と一蹴されてしまうかもしれません。それで「うちの子はダメだ」と決めつけてしまうのではないでしょうか。

それは大きな間違いなのです。

どのような環境であれ、馴染めないことだってあるのです。集団指導の塾がどうしても嫌だという子どももいます。自分のペースで、わかる部分はスピーディに、わからない部分を重点的に学びたいという子どもだっているのです。やる気がないのではなく、「その場」が嫌なんだという場合も多々あるのです。そのような子どもの「気持ち」を無視してしまうと、「塾に通っても成果のない我が子」に対して苛立ちを覚えるだけになってしまうのではないでしょうか。それでは成績は伸びません。

本当に子どもの成績を伸ばしたいのであれば、その子に合った環境を一緒になって探すということが大切なのです。最終目的は、「子どもが自ら学ぶ姿勢」を持つことです。どこにいても探求し、わからないことは解決することです。それは何もテストや試験のためだけではないのです。生きていく中で無数に直面するはずの困難に対して、どのように接していくようになるかという「素地」を養うことでもあるのです。中には答えのない難題も沢山あります。そのような局面に遭遇した際に、どのようにして打ち勝つのかということ、どのような姿勢で臨む人物になるのかということです。「環境が良い」などと決めつけてしまうのは、子どもにとって不幸です。「みんなは良いと言っているけど、うちの子には合わなかった」という考え方をしなければ、いつまでたっても子どもは不幸なのです。

塾や周囲の言う「成果」ではありません。自分の子どもにとっての「成長」とはなんなのかということをしっかりと見極める必要があるのではないでしょうか。成績はただの指標です。それが伸びるための「過程」に問題があるのであれば、それは親の責任です。本人のせいにして一方的に叱りつけたりするのは卑怯なことだとは思わないでしょうか。